◇自然と共存することの究極
◇本気で願うからこそ、備える準備と心構え。
◇熊が村に蜂蜜を取りにおりてくる。そこでとった村人の対応とは。
野性の熊と人が共存して生活をしたという、
群馬県のとある村で50年くらい前にあった実話です。
森に餌が少なくなったことが理由で、毎日、村に1頭の熊が山からおりてきて蜂蜜を探しに来るという事態が起こりました。
そこで村の会議で十分に話し合って決められた結論は
まさかの、
「対策は何もしない。」
でした。
つまり、蜂蜜を探しに村を歩いている熊を
「追い払わない。」
「捕まえない。」
「殺さない。」
ということです。
ある村人の自宅の庭はその熊の通り道になっていたそうです。
毎日、熊が庭を歩いていきます。
でも、その家の家族もその村の決定に納得していました。
この村に住んでいるのは大人の男性だけではありません。
子どもも女性も高齢の方ももちろん一緒に住んでいる村です。
その村の人はどうしてそんな危険と思える決定をしたのでしょうか。
なぜ・・・
なぜでしょう?
この決定をした理由は、
「村は自然(今回は熊)と人間の里。ここは動物たちの村でもある。だから、人間の都合だけでものごとを決めてはいけない。」
「自分たちは動物たちの世界の一部を借りて暮らしている。」
「自然と人間はいっしょに暮らす。」
という考え方だそうです。
とても危険な対応に思うのですが、
村の人はその危険を回避する方法を知っていました。
「熊は子どもを連れていると人間を襲ったりもするけれど、1頭でいるときは無駄に襲ってくることは無い動物。」
「不意に出会うと人間もあわてるけれど、熊もあわてるので、人から逃げるために人間を倒そうと襲ってくることもあるが、それなら不意に出くわさないように人間が気をつけてあげれば良い。」
「家の外に出る時は、人間がよく注意をして近くに熊がいないかを確認してから出れば、それですむだろう。」
またその村は「熊のことをよく知らない都会の人がくることはないような村」だったそうです。
そして、その対応の結果、その熊によって出た被害者は
0人。
何事もなく半月くらいたつと山に餌が増えてきて、熊は村にはおりてこなくなりました。
「熊が危険だからといって駆除することはしない。」
その村のみなさんは、
「どうすれば熊と共存できるか」。
「本気でそれを実行しよう!」
と思うからこそ、
「本気だからこそ」
普段からそういう意識で熊を観察してこられたんだと思います。
命がけの自然との共存。
口先だけのきれいな言葉を並べただけの行いではないです。
実際にこの対応、自分にできるかなぁ・・・
熊はすごくうれしかったでしょうね。
※この話の舞台となった群馬県上野村は、現在は外部の人たちも来るようにもなったために、熊に遭遇しない注意喚起を積極的に行っています。
参考:毎日小学生新聞 内山さんと考える旅に出よう
いつも一人の熊 2016年12月8日
内山節(うちやまたかし)
NPO人森づくりフォーラム代表理事 立教大学大学院教授
塾長 村木康太